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写真1 超音波堰式流量計YMT-MUSW

 

 

 


図1  超音波堰式流量計の動作図

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

表1 流量検査結果
標準流量[m3/H] 検査測定値[m3/H] 誤差[%]
0.00 0.00 0.00
5.00 5.01 0.16
10.00 10.03 0.35
15.00 15.02 0.14
20.00 20.05 0.26
25.00 25.03 0.10
30.00 29.98 -0.06

 

高精度流量計『超音波堰式流量計』

高山 和英
株式会社 山幸 技術グループ

1. はじめに

工場等の特定施設での排水管理において流量は重要な情報である。従来の排水に関する規制や汚濁状態の評価は濃度の面からのみ行われてきた。しかし,環境汚染に対する寄与は排出物の絶対量によって定まるものであり,このような観点から閉鎖性水域における富栄養化抑制対策としてCODの総量規制方式が導入されたのである。総量的な評価は,より厳密な排水管理,生産,処理工程における物質収支の解明,水系における多数の汚染源の汚染寄与率の解析などに不可欠であり,今後もその重要性を増す事は必至である。
 COD負荷量は次式により求められる。

L=C・Q × 10-3
 L:COD不可量(kg/d)
 C:COD値(mg/l)
 Q:排出水量(l/d)

 排出量削減計画に伴い,より正確で豊富な機能を備え,さらに出力の速い流量計が求められている。目視型FRP製計量槽を提供してきた当社は,今迄のノウハウを駆使し,その要求に答えるべく高精度の流量計『超音波堰式流量計』(写真1)を開発したのでここに紹介する。

2. 具体的用途
 
 厨房・工場などの産業用水および産業排水,焼却場での汚水,融雪用水,地下水,河川水,海水,湖沼水の試料採取に伴う流量測定。廃水処理施設の各処理工程における流入/流出量の測定。公共用水域への放流量測定。その他,液体の高精度流量測定。

3.動作原理

 現在,流量測定は,様々な方法が知られているが『超音波堰式流量計』は,せき(三角せき,四角せき,全幅せき)による測定方法を採用している。その理由を以下に挙げる。
1) 日本工業規格(JIS)に従った測定方法である。
2) 測定可能範囲が広くあらゆる工業用水・産業排水に適応出来る。
3) 測定操作・維持管理が簡便である。
4) 開水路用流量計なので実際に流れている測定対象および測定地点を観察することができ,処理水の状態が一目瞭然である。
5) 管路用流量計の場合,汚水等の水質によっては管路内に固形物が付着し,管径が細まり実流量との誤差を生む恐れがある。
 せきを流れる処理水のせき板上流の水位を超音波センサにより測定し,流量を算出する。流量データはパネル表示,プリンタ,パソコンリンク,4−20mA電流信号で出力する。処理フローを図1に示す。

4.特徴
『超音波堰式流量計』の大きな特徴は以下の通りである。
(1)高度な距離分解能力
 200kHZzのセンサ周波数により,1/10mmレベルで測定するので,高精度流量測定を実現した。
  
(2)音速の温度補正機能
超音波センサ付近に設置してある温度センサで周辺の温度を測定し温度変化によって生じる誤差を解消する。

(3)水質に依存しない(非接触測定)

(4)毎秒測定
毎秒流量測定をするので急激な流量変化に対応出来る。

(5)流量データの40日間バックアップ機能
 停電などがおきても,それまでの40日分の流量データは保存されているのでデータ損失はない。

(6)過去の流量データ再印刷機能
 過去の印刷データを紛失してしまった場合など,再度印刷を行うことが出来る。

(7)最大1ヶ月分の流量データ積算機能
1時間ごとの流量,一日の総流量,一ヶ月間の積算データを印刷する。出力は自動的に行われてるので難しい操作を必要としない。

本装置の流量検査結果を表1に示す。

5. おわりに
 CODの総量規制方式の適用により日平均排水量が50m3以上の特定地域事業場は,ある一定期間ごとにCOD負荷量の測定を行い,その記録を3年間保存する必要がある。以上の通り,本装置はCOD負荷量測定には不可欠な流量測定について網羅している。今後,精度向上および機能拡大をめざし改善を図る予定である。